~淡水性カメ類の調査はなぜ必要なのか~

 現在、日本の淡水性カメ類はその個体数の減少が指摘されています。減少の要因として、生息地での人為的な環境改変と外来種の侵入が挙げられます。前者では、生息地である水田、畑、池、河川や農業用水路の護岸、乾田化や道路の新設などによって生息地が減少すること、またそれらの工事作業中にあるいは交通事故による死亡が予測されます。後者では、外来種が生息域の侵入することで競争が起こり、限りあるエサ資源や生息空間を奪われてしまうことが予想されるからです。これらの要因が複合して作用しているところもあると考えられるため、一刻も早い保全対策が要求されています。しかし、未だ友好的な保全対策は実行されていません。その理由として、現時点での淡水性カメ類の生息の実態が明らかとされていないことが挙げられます。過去に定量的に調査が行われていないため、現時点では日本の淡水性カメ類が減少しているという評価はできないでいます。

 そこで、全国レベルで、淡水性カメ類の個体群の個体数、性比、齢構成、背甲長分布などを明らかにする必要があります。一般的にカメ類は寿命が長く繁殖が不可能な状態であっても生態だけが存在している個体群もあると想定して、特に齢構成や背甲長分布については注意して解析する必要があります。過去の個体数に関する報告や知見が乏しいことから、現状を把握することが、今後の個体数の増減の指針となるため、淡水性カメ類の調査は緊急を要しています。

 カメネットワークジャパンでは、2006年から環境NGOアースウォッチジャパンの協力を得て、「固有種ニホンイシガメの保全」プロジェクトとして調査を行っています。2009年からは、都市河川での具体的な生息分布を明らかとすることを目的として「多摩川の淡水ガメ」というプロジェクトもはじまりました。

 今まで多くのボランティアの方の調査に参加していただきました。市民ボランティアの協力は保全プロジェクトに不可欠です。引き続き市民の皆様のご参加ならびにご協力をお願いいたします。